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民主政治の大いなる実験 [社会批評・評論]

 鳩山内閣の誕生をウォッチングしていて、「あー、これは民主政治の実験なんだ」という実感を強く持った。初めが肝心、とばかりに、繰り出される“アンチ官僚支配”の小気味良いパンチ。原稿なしの大臣就任会見に始まり、極めつけは、新外相の“大臣命令”書であった。メディアに公開しての業務命令。メディアへの公開と言えば、大臣担当の職員が大臣の趣味嗜好を聞き取る光景まで公開されて、面白かった。「お酒は何が好きですか?」「ワインですね」。秘書らしき女性との会話だが、こういう会話は、オープンに限る。相手が業者なら問題だが、いかにも、防衛庁らしい会話だ。ところで、新外相の“命令”書は、歴代外務省が隠し続けている“核隠し”の秘密協定を「明らかにしろ」というもの。すでに退官している元幹部が“あった”と証言しているのに、“ナイ”“ナイ”と言い続ける外務省幹部への先制パンチだ。ほとんど深夜に近い時間の“爆弾命令”。各紙の朝刊が、絶対にねじ込むであろうホットニュースになった。やるね、前幹事長。この秘密協定は、最初に60年の安保条約で付けられたもので、70年の沖縄返還と同時に再改定された時に、より具体的になったと言われる。別のブログでも書いたが、毎日のスクープを、当の毎日や各紙が事実上、否定した日本のメディア史に残る恥部でもある。
 日本の政党で、この秘密協定を追究してきたのは、唯一、共産党だけであるが、にも関わらず、民主党政権があえて取り上げたところに、今回の選挙の大きな収穫があると、私は思う。無論、“友愛”を掲げる鳩山内閣が、この問題を取り上げないほうがおかしいのであるが、仮定の話で、もし社民党政権だったら、どうなっていただろうかと、率直に考える。それは、55年体制の中で、社会党が常に自民党と妥協を続け、保守分裂の下で政権を取るチャンスもあったのに、逃げてきたからだ。最大の原因は、中国、ソ連の影響を受ける複数のグループが、常に介在し、在野の思想集団とも連携を蜜にしてきたために、党の指導部が一枚岩ではなかったことによる。だから、地方選挙などでも“容共派”と言われる地方の大労組が、共産党との連立をする一方で、常に自民党など保守政党への支援を欠かない地方組織も、右派、左派の区別に関わらず、あったし、いまも残されているのである。このためかどうか、共産党内部には“社民”という党内の専門用語(隠語か?)が大昔からあって、大衆的な運動であっても、“彼らには近づくな”という60年代の“指導”が、いまだに日々入るのだ。
 ところで、新外相の“業務命令”を見ていて、私は、遥か昔の60年の安保闘争を思い起こし、あぁ、やっと、あの行動は無駄ではなかったのだ、という実感に達し、ちょっとばかりセンチになってしまった。センチメンタルじゃーねー、ってやつである。正確に言えば、49年ぶりの感動だ。わが日本民族は、取り敢えず、民主党を選んで正解だったと思う。正直に言えば、私は大学1年の春から夏にかけて、入学記念に大学の生協で買ったばかりの革靴の爪先を、見事にアスファルトですり減らしてしまったが、それはジグザグデモという独特のデモのためであった。外国のメディアは、“スネークダンス”と表現したらしいが、日比谷あたりの大通りをスクラムを組んで左右の道路端まで、蛇行を繰り返す、若者ならではのデモであった。無論、車は止まる。初めのうちこそ、車の方がデモ隊への抗議のクラクションを鳴らしたが、そのうちに、共感、がんばれの合図に代わった。そして、これは別のブログでも書いたことがあるが、夕方の学生デモに対して、沿道の一般市民から焼鳥やあんぱんなどが、差し入れられるようになった。
 ところが、都会に限定されたとはいえ、これだけ、一般から支持された安保闘争が国民の間で起きたのに、その後の政治に反映されないのが、私にはずっと不満だったのである。ところで、安保闘争とは、正確には“安保条約に反対する学生と勤労者の闘争”と言うべきだが、当時は省略して安保闘争と呼んでいたのである。私は、6月15日の同条約自然承認後、必然的にデモは終わったが、大衆の中には国家に対するアンチテーゼとして、多少は生き残るだろうと考えていたが、そうはならなかった。原因は、野党の主力である社会党が左右に分裂し、総評などの労組と連動して、国民の支持を得るより、自民党との宴会や妥協に精力を使ったからである。差し詰め、村山内閣の誕生は、この頃の国対政治の延長と言うべきで、社会党が、その後、社民党と名前を変えたのは、私から見れば、恥ずかしさを隠すためではないかと思うのである。そんなわけで、いまの社民党党首が、あれこれのパフォーマンスを国民の前でして見せているのは、どうにもウザイ。民主党の閣僚たちが、至極真面目に、国民との約束を果たそうと努力している時に、閣僚の1人である社民党党首の勝手気ままな行動には、大いなる国民的なチェックが必要と思われる。
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